
皆さん、本日はどうもありがとうございます。多くの方にご出席を賜りまして、まことに光栄に思っております。
景気が良くなったという記事が流れましても、地方の中小企業には何らその影響ははね返ってこないものであります。ただ、この日本の中に、事業再生をするエネルギー、力がたくさん育ってまいりました。産業再生機構の存在や、倒産法制の大改正も始まりまして、企業を存続させようという動きがたくさん出てきたと認識をしております。私たちセントラル総号研究所は、常に新しい手法、またはM&Aを多用した再生術などを技術的に構築して、それを世の中に広めていかなければいけないと考えておるわけです。
私のところで再生を果たした経営者やその奥様から「助かりました」「子供が安心して学校に行くことができました」という手紙もたくさんいただきます。再生というのは本当に根気の要る作業ではありますが、こうしたものを見ますと、再生というのはやっぱり意義のある仕事なんだと、つくづく感じます。
私たちは、債務者と債権者、地方の金融機関と中小企業の方々の付き合い方を変えようと思っております。何でも本音で言える取引ができるようにしたいのです。
一生懸命現状を訴えて、納得をしてもらうという作業を繰り返していくということが、これからの日本の中小企業のあり方の中で必要なことなのではないのかと考えて、本日の式典を開催することにいたしました。

C社は近畿圏でソシアルビル賃貸業。資本金1000万円、従業員15人。当時の売上が約12億。債権者は銀行、信金、ノンバンク合わせて15社。負債総額110億。テナントビルを15棟、区分所有の物件と土地で実勢価格で約30億の物件をお持ちになっていました。
当初は非常にユニークな様々な形態の飲食店を展開して事業を伸ばしました。そのうち本来の飲食店と副業であったビル賃貸業が逆転して、ビル賃貸業が中心になって展開をしたところに、バブルがはじけて資産価値が下落する。負債総額はそのままという状況の中で、平成15年3月に当社にご相談にお見えになりました。
その後、様々な分析や精査をさせていただきました。その結果、独特のノウハウをお持ちになっていることが分かりました。ソシアルいわゆる飲食店のビルを経営されて、その稼働率が9割以上ということで、不動産管理に関しては非常に長けていらっしゃるのです。当初は、15ある物件をA、B、Cと3つのランクに分けることにしました。Aランクは、別法人をつくって、そこに資金をつけて、事実上の買い戻しをする。Bの物件はそのまま残しておいて、Cの不採算・低価値の物件に関しては売却して債務の圧縮を図ろうというスキームを組み立てました。金融機関には、サービサーへ譲渡された担保つきの不良債権もしくは担保物件を買い戻するためのおカネを融資してもらう交渉を始めたのです。情報は全部、ディスクローズしました。RCCやサービサーに譲渡されたものもあったので、「支援してくれるというなら、もう1回買い戻しの資金を融資してほしい。債権処理するのなら我々と提携するところに売ってください」と金融機関に協力を仰いだんです。しかし、一部の金融機関の強硬な反対で、このスキームは難しくなりました。
そこで、たまたま私どもがセントラル再生基金を立ち上げた時期でございましたので、本来一部の金融機関から借りて買い戻しをする分の不動産をファンドに入れることにしました。15棟のうちソシアル系のビル8棟について、これは2〜5億クラスのものが中心なんですけれどもノンバンクのご協力をいただいて、ソシアルビルだけのファンドを組成させていただきました。ビルの管理能力に長けているC社には新たにファンドの管理会社C‘をつくっていただいて、そのまま管理をお願いしました。昨年の秋に、地元の信用金庫から全額C‘社に25年の長期弁済を受けて、いまC’社の25年払いの通常の所有物件というかたちで再生ができたという案件でございます。
なぜこんなスキームが成功したのかといいますと、1つは、TMK(特別目的会社)という、ファンドの中で柔軟性のある方式を採用したストラクチュアとそのタイミングと、うまくマッチングしたこと。それと、何よりも大きいのは、Cさん自身がそのスキーム、ノウハウを習得し、熟知し、実行したことです。中小企業のターンアラウンドは、経営者自ら、オーナー自らがターンアラウンダーになる。その意志と、熱い情熱と冷静な判断力を持ってもらって、やる気が出ることによって、本当の意味でその中小企業が再生していくというふうに確信を持っております。そのサポートをさせていただくということが私どもの使命ではないかと思っております。
支援先 C様
それまで会社の状況は、災害ですごい痛手を受けていまして、なんとかしなきゃいけないと思っていました。『借りたカネは返すな!』を読んでその内容が、まさしく私が思っていた通りであり、金融機関の方から助言をしていただいたスキームに近かったので、とにかくセントラルさんにお伺いしようと思いました。勉強会にもずっと参加させていただきましたが、自分で知識を持って、何がなんでも成功しよう、何がなんでも再生をしようという強い意志があるかないか。これが一番、再生できるかどうかのキーポイントではなかったかなと思います。
セントラルさんにお世話になって、命の恩人であると今でも思っております。こうやって毎日楽しく、ごはんが食べられるのも、セントラルさんのおかげと思っております。
皆さん、最後までお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。
また高いところから少しお話をさせていただきますと、大阪に支店を出しまして約1年、ここで二次会の席を終わろうとしておりますが、胸に熱いものがこみ上げてきております。私が、セントラル総研を立ち上げ、事業再生をやろうと決めたきっかけは、やっぱり大阪での仕事だったと思うわけなんですね。
私は銀行系リース会社の回収担当としてこのすぐそばの心斎橋のそばの支店にいたんですけれども、債務者に対してひどい扱いもしてきましたし、私自身もされましたし、大変な時代だったと思います。
日本は旧法時代の債権回収をしてきた時代があります。これは金融機関の恥部だと思います。人間の心を失わなければできなかったという時代があるんです。私と同年代の金融マンにはその経験があります。だからこそ、私は、中小企業の経営者の皆さんが、日本のために、または本人や家族のためにも再生して納税者になっていただくことを目標に、再生を実践しております。
大阪はまだ疲弊しております。ここで私たちの力が、微力ながら近畿圏から世界中に発信できることを祈念しまして、最後の言葉とさせていただきます。
きょうはどうもありがとうございました。

実はこのケースは、平成18年の3月から6月まで、ドキュメンタリー番組『ガイアの夜明け』の取材を受けました。まだ再生途中の段階で放送したものですから、その後どうなったかということも含めて、この再生事例をお話をさせていただきたいと思います。
このホテルは東北地方のある駅前のホテルです。売上が約10億、業種はホテル経営、資本金5000万円、従業員がパート含めて163人、負債総額は約20億円。地元のD銀行がメインバンクでした。不動産としては、ホテルの土地建物、タワー式駐車場、倉庫と一部貸家、そのほかに自宅を持っています。営業利益として3年ほど前は6000〜7000万のキャッシュフローがあったんですが、ここ2年間ぐらいは5000〜6000万で、2年間で1億3000万ぐらい、営業フローベースで赤字になっていたという実態です。
昭和26年にC社長のお父さんが開業しましたが、バブル崩壊とデフレが重なって、ホテルの業績を圧迫していきました。
平成16年4月、銀行から出向者を2人受け入れます。1人は副社長、1人は経営責任者として。「この副社長に全部営業権を譲れ。あなたたちはお飾りの経営者になってくれ。銀行が後は面倒見るから」と、銀行は「支援」として経営に乗り出したわけです。その2年間で営業キャッシュフローは悪化し、借入が18億5000万から約20億にふくらんでいました。その地銀の経営母体がメガバンクに移り、不良債権を処理する動きになりました。経営に事実上タッチしていなかったはずのC社長は、いきなり「経営責任を取って、あなたたちどきなさい」と宣告されたのです。これではあまりにも理不尽過ぎると、C社長が私どもの会社に駆け込んできたのが去年の1月のことでした。
私どもは早速、デューデリジェンス、財務精査に入りました。徹底的に不動産の中の資産の数字を分析しましたら、3年前はキャッシュフローが出ていましたので、6〜7億の債務に圧縮して長期化したら、なんとかなるんじゃないか、という方向性が見えました。そこで私たちは原価率の見直しをはじめ様々な改善によって、経営計画の策定をすれば、再生が可能だと思い、早速、主債権者である銀行に何度も行きました。
一方、経営者のM社長に対しては、「今までの経緯を従業員に説明し、営業戦略、経営管理の見直しを含む経営計画の策定を改めて行い、それも説明することが必要だ」と説得し、従業員への説明会を開催したのです。 我々が提案したスキームは、「D銀行の持っているホテルの債権を、銀行が納得する価格でサービサーに売ってもらう。新会社を設立して、その新会社がホテルを営業し、サービサーに対しては不動産賃料などを支払う。3年ほど経ってホテルの営業実績がついてきたら、もう一度地元の金融機関に融資を受けて、債権をサービサーから買い戻し、自力再生していく」というものです。
それと、これは当社の八木が常に言っていることですが、中小企業の経営者にとって自宅を守れるかどうかというのは、その後の再生に大きな影響があるんです。このケースでもC社長の自宅の担保を外してもらいました。任意整理でそれぞれがお互いに歩み寄れるスキームができたということだと思います。
昨年8月に、銀行がサービサーへ債権を約3分の1で売却することができました。この時点でこのホテルは事実上、20億あった債務を約3分の1に圧縮できたことになります。
けれども、ただ単純に債権を圧縮するだけでは何の意味もない。いかにフリーキャッシュフローを多く出せるような体質にしていくかということで、債権者も我々のようなコンサルタントも加わってチームをつくって取り組んでいくことになりました。
金融機関が無税償却をするかたちの中で損を出して債権を売るというのはサービサーに対してしかできません。ですから、サービサーと協力をして、お互いに事業再生を目指したスキーム構築ができたことが1つのポイントだと思っているんです。
私ども、常々思うんですけれども、中小企業の活力こそが本当の意味の日本の活力だと思います。その意味で、中小企業の再生なくして、本当の意味の日本の再生はないんじゃないか。そのためには、経営者自らがもう1回頑張るんだというところを、我々がどうサポートして、その気になってもらって行動してもらえるかということが1番重要じゃないかと思います。そのために、ぜひ皆さま方の今後のご支援をいただきながら、一緒になって日本の中小企業再生に一翼を担えるような仕事ができればと思っております。
「不易流行」という言葉がありますが、今日の事業再生についても、「A不易」、つまり「将来も変わらないもの」と、「@流行」、つまり「将来は変わるだろうが、今はこうなっている」という問題とがあります。
■現場で役立つ金融マンをつくる
最近1年間、地方の財務局長や金融機関の内部研修でよく頼まれるようになったのが、「どうやったら金融マンを、販売や再生や経営の現場で役立つようにできるのか」というテーマです。産業再生機構は採用方針として、「商社出身の人と銀行出身の人は、現場で経営者とか販売員には絶対に役に立つはずがない。だから、採用しない。」という原則を貫きました。「なぜ、銀行員は役に立たないのだ」「どうするべきなのか」、そういう疑問について率直に向き合う傾向が出てきています。
これについては、事業再生に経験の深い金融機関ほど真剣に考えている傾向が見えます。
■地域金融機関は地元の現状を把握すべき
地域金融機関やメガバンクの支店のレベルが十分でないために、首都圏なら実行可能なファイナンスや再生事案が地方では無理であるという現実があります。私も研修で福岡銀行、広島銀行、商工中金本店、中小公庫本店などにお邪魔していますが、これらの金融機関はかなり先進的です。だから、ノンリコースローンや不動産証券化などについて「共通言語で」話せます。しかし、大部分の地域金融機関は、各種のノンリコースローン、各種の証券化、バイアウト関連ファイナンス、メザニンなどのご経験がないため、地方では、それらについては外資系金融機関または先進的なノンバンクに御願いするしかないというのが現実です。
一方、ハゲタカといいますか、外資は地方でも活発です。にもかかわらず、地元金融機関がついていけない状態がまだ続いています。ここの辺りは、不易流行という意味では、今後変わっていくであろうし、変わらなければいけないところだと思います。
■中小企業再生支援協議会の利益相反問題
中小企業再生支援協議会は、あと1年で当初の制度が終わります。その後どうするかという問題があります。私の個人的な希望を言うと、批判を受けた部分などはきちんと直して、より良い形にしてほしいと思います。
一番のポイントは、英語で言うとconflict of interest(利益相反)問題です。「片方が1円損すれば片方が1円得する関係」、たとえば「債権者と債務者の関係」では、「債権者側の人」が、「債務者の代理人になる」とか「債務者のアドバイザーになる」とかいうことは、職業倫理上あってはいけないことです。弁護士や会計士の世界では、この職業倫理が厳格に守られています。
しかし、中小企業再生支援協議会の一部では、債務者の利益のために働くべき常駐専門家やプロマネの職を、地銀からの出向者やOBが務めていらっしゃるという現実があります。その結果、「金融機関が認めないものは、協議会としては認めませんよ」という本末転倒な現実もかなりあります。これは、制度設計の問題です。
金融機関の一部は、金融庁対策として協議会を利用してきました。債務者区分を維持するための理由付けとして、「協議会の作成した計画書・再生案では、このように売上も利益も拡大すると見込まれている」という説明を金融庁に対して展開する現象が全国的にありました。「甘い計画」を作成してしまった結果、二次破綻してしまう企業がこれから全国的に出てくると思います。
これでは不健全です。今後はきれいにしていただいて、国のお金を正々堂々と活用する仕組を作ってほしいです。
■監査の透明性が個人保証廃止につながる
不易流行のうちの不易、つまり、「この点は変わらない」「本当にこれは本質だ」という話題も幾つか申し上げたいと思います。
まず、透明性です。これは、transparencyという英語の直訳です。これがキーワードであることは、今も昔もそして将来も変わらないと思います。それは「説明責任」と「自己責任」ということと関わる資本主義の大原則です。
この問題が、事業再生のどこに絡んでくるかというと、一つは監査の問題です。八木さんのお話の中で、日本の会社は半分ぐらい粉飾しているんじゃないかということがありましたが、私は99年に日本興業銀行を辞めるまでの間、日本の会社の99・9%は粉飾していると思っていました。日本では監査の透明性が当てにならない。そうすると金融機関としては、「そんないい加減な決算書を出されたって困ります」ということで、もっと確実なものである不動産担保や個人保証を求めるようになります。基本的には、これは制度の問題、監査の問題、取引の透明性の問題だということです。
■売り上げを伸ばす内科治療が重要
今後も変わらないことの二番目としては、「外科」「内科」と言われる世界のことをお話ししたいと思います。
企業が窮境から立ち直っていくときに、初期段階では債務整理をします。これは、ガンの方が外科手術で患部を切除することに喩えることができます。しかし、退院しても傷は癒えていない。栄養をつけなきゃいけない。リハビリして体力をつけなきゃいけない。企業でいえば売上げを伸ばさなきゃいけない、そこから利益を増やしていかなきゃいけない。
つまり、「外科手術」(=債務整理)も必要だが、そのあとで「内科治療」(=収益力の維持、向上)も必要だという原則は、今後も絶対に変わらないのです。
経営者の命を削るのは資金繰りの苦労ですよね。怖い夢を見て朝4時とか5時に目が覚めますよね。皆さんも御経験があると思います。そうしたときに、「売上があと1割伸びれば、道は開けてくるんだが・・・」ということは多いですよね。一倉定先生は「売上なくして経営なし」と言われました。売上を伸ばしていけない会社は、厳しい言い方ですが、負け犬なのです。この現実は、今も、10年後も、20年後も同じだと思います。
■企業経営は経営理念と経営力
最後にもう1つ。歴史に名を残された立派な経営者の方々が、「企業の経営で一番大事なのは経営理念だ」とおっしゃっています。企業の経営は「志と経営力」、つまり「人格面の要件」と「実務能力の裏づけ」という両面が必要だということも、永遠の真理だと思います。
経営は尊い活動です。だから、失敗した時の罪も重いのです。赤字の会社は、必ず社員を苦しめます、世の中に迷惑かけます。お金を稼ぐことを悪いことだと誤解している人もいます。「そうじゃない。我々の努力が経済社会を支えているのだ」とおっしゃってください、人生の先輩として、会社のリーダーとして。それが社長の任務であることも、今後とも変わることのない原則です。
豊かな産業社会を実現するための一番の立役者は、実業家、実務家ではないですか。我々の頑張りによって、だめだった企業が蘇らせたり、それを人を幸せにできる活動に結びつけたりできるのです。これも、不変だと思います。
変わりつつある事柄もありますが、それらに目をすべて奪われる必要はありません。不変で、かつ普遍の真理というのもある。「変わらない」という「不変」と、「ユニバーサル」という意味の「普遍」。これらのことは、企業の再生とか経営に携わる者が死ぬまで忘れてはいけないものだと思います。
*越様の講演の中から一部を抜粋させていただきました
