メールマガジン


2008/03/02
 2008/03/02 復活メルマガ第十五弾


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■□    CRIメルマガ 『セントラル事業再生レポート』
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   ≪事業再生と敗者復活〜再生相談4000件の相談現場レポート≫
         
発行:株式会社セントラル総合研究所
http://www.sodan.info/
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 『自費出版S社のケース』〜其の一〜


出版社の経営難、倒産のニュースが相次いでいます。
仮に出版社が倒産してしまうと、元社員や契約を交わして大切な原稿を
出版社に渡した著者がどんな被害を受けたのか。
前回に続いて、その実態を描いてみたいと思います。


「未払賃金の立替払請求について下記をご確認ください」―――。

 ×月×日、S社の元社員Tさんのパソコンにこんなメールが入って
きました。この時点で、S社は破産の申し立てはされていても開始決定
はなされておらず、「保全管財人」が決まっていただけでした。
 ところが未払賃金の立替請求のための証明書を出せるのは、「破産管
財人」でなければならないということがわかったのです。


「会社から届いた〈未払賃金の立替払請求書〉は会社に返送せずにその
ままお持ちください。返信しても無駄です」とメールは続きます。

―――そんなこと言われても、保全管財人とか破産管財人とか馴染みの
ない単語ばかりが並んで作業が煩雑でわからない―――

 Tさんは頭を抱えるばかりです。S社の社員が加盟する労働組合は、
未払賃金を立て替える「労働者健康福祉機構」と懸命の交渉を続けてい
ますが、それでもメールの文面には曖昧な表記も目立ちます。

「すでに返送した人は再度出すことになると思いますが、正当な額を計
算して出すほうがいいと思います」。

末尾の「いいと思います」という表現がTさんの不安を増長させてい
ます。このように倒産、破産のケースの労働債権や各種債権の保全は、
きわめて不透明な部分があるのです。
 一方、S社と契約を交わして自著を出版した著者たちも混乱していま
す。S社のホームページには、連日この件のお知らせが載っています。

「(著者からの)ご入金と注文の照合作業ができないものが現在100
件近くあります。下記の表のご入金に心当たりのある方はご連絡くださ
い。1月×日98280円ハラ×ヨ××、×日48000円ナカ×マ×
キトシ、×日108000円タカ×シトシ×コ」

 つまりS社倒産の報を聞いた著者たちが、自著の在庫を買い取るため
にお金を振り込んできたのです。ところが口座名義が家族だったり会社
だったり、あるいは著者名がペンネームだったりして、元社員たちが必
至で作業しても照合できないのです。このままではS社は、倒産した上
にお金を振り込んだ著者を二重に裏切ることになります。元社員たちは
元の職場とは別の場所で懸命の確認作業を続けています。もちろん無給
の奉仕であり、積み重ねられたダンボールの中には著者から送られた原
稿も詰め込まれています。
 また、まだ本になる前の原稿をS社に預けている著者の場合はもっと
悲惨です。HPにはこんな文章も載っています。

「皆様が不安の中で日々を過ごしておられることは当職も十分に理解で
きますが、事業譲渡という性質上、途中経過を発表するわけにはいきま
せんことをご理解いただきたいと思います」

 破産開始決定までに次のスポンサーが見つかれば、製作途中の原稿に
ついては作業が再開される可能性があります。とはいえ幸運にもそうな
ったといっても、著者は事業を譲渡された会社との再契約が必要です。
そこでまた契約金を要求される可能性もあります。せっかく額に汗し
て書いた原稿が弄ばれてしまうことに、憤りを隠せない著者が多いはず
です。また、過去に別の出版社でも同様のことを経験し、二度も裏切ら
れた著者もいます。

 このように、一つの企業の倒産、破産はそれに関わる全ての人たちを
混乱の渦に巻き込みます。S社のケースでも、元社員や著者の中にはお
金では回復できない心の傷も残りました。こうなる前に、ターンアラウ
ンドの作業に着手しないといけない―――。全ての経営者がターンアラ
ウンドの知識を持つことの大切さを私たちが訴えるのはそのためです。
 全ての経営者の皆様には、そのことを肝に銘じていただきたいと思い
ます。



《追録》
前回の配信内容で〈未払賃金の立替払制度〉について「破産申し立て以
前」という記載を、「破産申し立てを遡る6ヵ月より以前」に訂正いた
します。

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