初めての方へ資金調達債務返済、債務超過不動産リースバック

TOP > メールマガジン > 事業再生の現場から > 「撤退したくてもできない」窮地からの復活〜事業譲渡

事業再生の現場から

メールマガジンで紹介しております「事業再生の現場から」を紹介しています。


(10)「撤退したくてもできない」窮地からの復活〜事業譲渡

事業、特許権、負債、全てが含まれる事業譲渡
事業譲渡とは、企業の営業の全部あるいは一部を、他の企業に有償で譲渡する手段です。単に土地や設備を譲渡するのではなく、譲渡の対象には工場や機械、従業員、取引先、特許権、材料を仕入れるコストや負債など、事業活動におけるすべての機能が含まれます。今回は、首都圏で居酒屋フランチャイズ店を経営するR社(仮称)の再生事例から、事業譲渡について紹介します。

状況:売上3億、5店舗、従業員15名、パート40名、駅前の雑居ビル店舗

ブームに乗って焼肉にも
R社は、手頃な価格とトッピングに工夫を凝らした麺類メニューでファミリー層の心を掴み、順調に店舗展開を行っていました。R社の社長S氏は、「家族の触れ合いが乏しいこの時代に、家族が共に食事をする楽しい機会を提供したい」という強いポリシーから、長い間、理想とする店舗づくりに注力。「家族が楽しい時間を過ごせるか」と常に自問し、メニュー開発や店内の雰囲気づくりなど、有形無形を問わないサービス提供を追求していました。
その甲斐あってか、R社の打ち出した「ファミリーを第一に考えたコンセプトと姿勢」は、地元に受け入れられ、毎日が満員御礼状態の順調ぶり。同時に、飲食業界では「焼肉」がブームの絶頂を迎え、年商3億を超えたR社も5,000万円を投じ、フランチャイズではない自社の焼肉店のオープンを決行するまでに至ったのです。

撤退コストが3,000万円
ところが、少しの時をずらして世間ではBSE問題や食料偽装問題が持ち上がり、外食産業全体に暗雲が立ち込めました。オープン間もないにもかかわらず、R社の展開店舗のほとんどが不採算店へと転落。毎月300万円近い赤字を出し、財務に無理が生じ始めました。窮地に立たされたS氏。気づいたときは、「すでに撤退したくとも撤退できない、身動きの取れない窮地の状態だった」といいます。
その言葉通りデューデリジェンスの結果、現預金の残高が2,000万円であったのに対し、不採算店舗の撤退コストが3,000万円近く必要になってしまうことがわかりました。S社長の気持ちは、「続けられるなら続けたい。ただ、全ての店舗を経営するのは無理だ。せめて2店舗を残して、そのうち1店舗は経営に対して強い関心を寄せている社員へ引き継がせたい」というものでした。

必ず再生するという意思が大切
そこで、R社が経営する全5店舗のうち経営継続が可能な店舗を調べ上げ、キャッシュフローに重点を置いて事業継続可能な3店舗を選別。そのなかの1店舗に対しては、事業譲渡を選択しました。具体的には、財務的に一番負担が重かった居酒屋フランチャイズの1店舗を本部に売却して、負担を軽くするというものです。これを実行すると、5店舗中3店舗をR社で経営できることになります。その後、計画通り1店舗を従業員へ引き継ぐこともでき、R社の財務負担は激減。再生への道も明るく照らされ始めました。
現在、R社が経営する2店舗は、まだ再生の途中にありますが、計画を立ててから6ヶ月で単月黒字への転換を果たしました。S社長が本来持っている飲食店に対する経営理念をもって運営すれば、以前のような活況が戻るという確信があります。

結果:5店舗から3店舗へ縮小(1店舗は従業員へMBO)、従業員8名、パート22名、半年後単月で黒字

[2010.9.16配信]

ページトップへ