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事業再生の現場から

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(11)悔いの残る支援契約キャンセル1

変わり行く出版業界
「ねぇ、最近出版社って景気悪いの?」普段よく利用する定食屋で、ある日、突然女将さんからこう尋ねられました。今に始まったわけではなく、「出版不況」は平成2年から業界内では深刻な問題となっており、出版業界を取り巻く経営環境は年々厳しさを増しています。特に近年は、華やかなイメージを持つ大手出版社さえ倒産に至るケースも。セントラル総合研究所でも、出版社からの事業再生の相談は年々増加の傾向にあります。

リストラしなくても・・
その女将さんは続けて「姪がC社に勤めてるんだけど、希望退職を募っているらしくて、もうじき辞めるのよ。」と言い、それを聞いたコンサルタントは驚いて一瞬箸が止まりました。C社といえば、タイトルを聞けば誰でも知っているようなベストセラーや雑誌を多く抱える有名な出版社です。しかし、コンサルタントが驚いたのは、C社が大手だからという理由によるものではありません。
「結局リストラか。ほかに再生の方法はいくらでも選べたのに」、C社の従業員の雇用を守ることができなかったことが残念で堪らなかったのです。実は、ちょうど1年ほど前に、C社はセントラル総合研究所へ事業再生の相談に訪れていたのです。とはいえ、それはコンサルティング契約には至らなかった案件でした。

赤字経営ではなかった
分厚い決算資料を携えて面談に訪れたのは、C社の社長ではなく経営企画担当役員でした。状況を伺うと、年々収益が下がってはいるものの、会社全体での黒字決算は維持しているとのこと。財務状況を確認しても比較的良好で、強引なリストラの必要は感じられず、雇用は維持しながら資金繰りの回復も見込める状態でした。
何度も面談を重ねて再生の方針を定め、大まかなスキーム、再生実務にかかる費用の見積もりを示し、契約書を取り交わせばすぐに実行できるまでに進展してはいたのですが、その段階になってC社からは別のコンサルティング会社と契約する旨を告げられ、私たちが提案した再生案もそのまま棄却されたのです。

後味の悪い結果に
契約のキャンセルは、先方の都合だから仕方ないと言ってしまえばそれまでですが、本来ならば必要のなかったリストラを止めることができなかったことが悔やまれ、心中穏やかではありません。もちろんそんな事情を女将さんに話すわけにはいかず、その場では曖昧に相槌を打っていましたが。「あの子、大学卒業してから20年も勤めてたのにあっさり首切られちゃってこれから再就職なんかできるのかしらねぇ。」と心配する声を聞くと、苦々しい思いが込み上げるのです。

[2010.9.30配信]

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