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事業再生の現場から

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(12)悔いの残る支援契約キャンセル2

文化も守れなくなる時代へ
事業再生への着手が早かったにもかかわらず、結局はこのほど従業員のリストラという残念な状況と相成った出版社C社。セントラル総合研究所とのコンサルティング契約には至らなかったこの案件ですが、事業再生に対するさまざまな教訓が得られる事例です。
従来、出版業界は『文化』や『理念』に重きが置かれ、出版社経営は利益追求とは遠いところに位置してきたように感じらます。しかし、出版社が倒産してしまえばそれまで発行した書籍も流通させることができず、絶版となれば文化を守ることすらできなくなるのです。良書を出版することは業界に求められる社会的な責任ではありますが、それを果たすためには安定した利益を生み出す体質づくりが必要です。
その点において、業界の中でも大手に位置するC社では、編集部門や営業部門だけでなく、管理部門も無防備ではありませんでした。それどころか、大手企業らしく役員の面々には金融機関出身者も名を連ねています。

V字回復は優秀な人材まで手放すことにも
初回面談終了後には担当したコンサルタントが「あれだけ資金があって、金融や経営の知識を持った人材も抱えていれば、順調な経営を続けていくのは造作無いはず。なぜわざわざ外部のコンサルティング会社に相談する必要があるのかわからない。」と首を傾げたほどでした。
先方にしてみれば「餅は餅屋」、事業再生となれば専門家に任せるのが一番という考えではあるのでしょう。しかし、C社ほどの規模の企業となると、仕事を外注するというスタイルが染み付いているのかもしれないな、という思いが頭をかすめたのも事実です。
大手企業の再生モデルに見られる「V字回復」は、大胆なリストラを伴うものがほとんどです。ところが、出版というクリエイティブな現場においては、優秀な人材の流出によって将来の利益すらも手放してしまう可能性も否めません。

ヒト、モノ、カネの順
セントラル総合研究所ではいつも「事業再生において重要視するべきはヒト、モノ、カネの順」と経営者に説明しています。
まず「ヒト」は従業員の労働債権。倒産の危機にある場合、社内の不安が大きくなって社外へ風評が及ぶことが危惧されます。また、先に述べたとおり、事業継続のためには優秀な人材の流出も回避しなければならないため、社員への労働債権は真っ先に確保する必要があるということです。
「モノ」は取引先や業者の金融債権を示します。これを疎かにしては再生の意味がありません。
最後の「カネ」は銀行からの借入などの金融債権です。リスケジュールなど交渉の余地が残されているのですから、経営者(あるいは財務担当者)は雇用を削る前にまず、金融機関へ相談すべきでしょう。

[2010.10.18配信]

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