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事業再生の現場から

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(134)そのカネは、本当に使っていいのか?!〜
    破綻企業に見る資金繰りの落とし穴

脱毛サロンMP(仮称)をはじめとしたエステサロンが採用する「前受金制度」。
MP破綻の最大の問題は、この会員から預かった前受金の会計処理にありました。
ところが、現在の日本の企業決算の方法では、それを管理しづらいというのが実態です。

前受金=預かりもの

破綻企業前受金は解約に備えて保全しなければなりませんが、多くの場合は、前受金も売上金と同じ口座で管理されています。
もちろん、「前受金=預かりもの」ということを経営者自身がしっかり認識していれば、不用意に前受金の分にまで手を付けることはないでしょう。


前受金に手を出してしまうと

しかし、「お金に色はついていない」と語られることもあるように、入金されたお金の全てを「売上」という感覚で扱ってしまうのも無理からぬこと。
その結果として、売上の成長が止まった途端に資金繰りに窮する・・・というケースは、エステ業界に限らず、前受金を採用するビジネスでは陥りやすいパターンと言えます。

この「前受金ビジネス破綻」の最たる例は、外国語教室「NOVA」を運営していた株式会社ノヴァ(平成19年に破産)ではないでしょうか。


「駅前留学」解約金が戻らない

「駅前留学」というキャッチコピーと斬新なCMで一躍脚光を浴び、全国展開を行っていたNOVAも、急成長の裏で「予約が取れない」「解約金が戻らない」といったトラブルが表面化。
外国人講師をはじめとしたスタッフの賃金未払い問題と併せて、豪華すぎる社長室の存在も明らかにされました。
派手な広告も、大きく報道されたあの黄金風呂も、受講生からの預かりものであるはずの前受金で誂えた物だったと考えられます。

黄金風呂や競馬の馬主は極端な例かもしれませんが、様々な業界で長い間、同様のトラブルが後を絶ちません。
これは、単に「経営者の無駄遣い」で終わる問題ではないのです。


前払金の処理には対策が必要
この問題を根本的に解決するため、前受金の会計処理については、何らかの対策が求められます。
例えば、前受け消化率の定期的な開示が義務付けられれば、不当な流用が未然に防げるかもしれません。
あるいは、前払いできる期間を制限するルールが設けられれば、むやみな集客も抑えられるはずです。

こういった規制強化が企業成長を妨げるという意見もあるかとは思います。 しかし、長期的に見れば、企業財務を健全化し、結果的には企業倒産の減少にもつながるのではないでしょうか。


[2015.12.14配信]

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