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事業再生の現場から

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(14)生き残れるか?町の本屋さん〜書店再生1

今月、作家の村上龍氏が電子書籍を制作・販売する会社を設立したというニュースが大きく報じられました。これにより、出版業界が大きく変革すると見られています。このニュースに関してはブログ・経済時事で詳しく述べています。

書店業も淘汰の時代に
古いタイプの本読みとしては、紙の手触りやインクの香り、書店で本を探す楽しみなどを味わえないのは寂しい気もします。とはいえ、流通コストがかからず、欠品の心配もない。消費者にとっては良い作品を安く読めるうえに、紙を使わないのでエコにも貢献できるなど、いいことずくめの電子書籍の普及に期待が膨らんでいることは言い逃れできません。しかし、事業再生の現場にいる人間としては新たな心配も生じます。書籍が電磁的媒体で配信されることにより、年々激しさを増している書店業の淘汰に、一層の拍車をかけることは間違いありません。

老舗だからは、通じない
電子書籍以前から、Amazonをはじめとしたオンライン書店の出現や、CD、ゲーム、文具、雑貨も扱う複合書店、都市型の有力書店などの広域展開に伴い、中小規模の書店は確実に打撃を受けています。地方では大型店の新規出店の計画が表に出るとまず「近隣の既存店への影響が懸念される」といった声が多く聞かれます。実際、多くの消費者の流出は避けられないのが現状です。
「出版不況」の深刻化による出版業の大型倒産が目立つばかりではなく、それを追うように、「大手」「老舗」と呼ばれて地元のシンボルとなっているような書店の閉店というニュースも報じられるようになりました。他小売業と違い、価格的な競争力に乏しい書籍販売業は最早、老舗だからといって安泰とは言えません。むしろ、借入れの負担が増えても老舗の看板の責任の下で、事業を縮小することもできず、長い間地元で商売をしてきたという信用で融資を受け続けた結果、負担が解消できずに倒産に至るというパターンが多く見られるのです。

非採算店閉鎖、家賃値下げ交渉で事業継続
セントラル総合研究所では一昨年、関東のあづま書店(仮称)の再生を手掛けました。地域では教科書販売も任されているというあづま書店は、駅ビルをはじめ、同市内に郊外型の大型店舗も展開するほか、レストランや宅配寿司などの飲食事業も複数運営するなどしており、地元でも信頼の厚い企業でした。ところが設備投資のための借入れや、駅ビルの高額なテナント料が資金繰りを圧迫しているなか、近年の業界不振により書店のほとんどは売上げが減少。相談に訪れたときには取次への支払いが滞っていたのです。
あづま書店の場合、取次や金融機関との交渉の結果、非採算店舗を閉鎖し、書籍販売以外の事業を縮小させることで、優良店の運営と事業の継続に協力を得られることになりました。また、テナント料がネックになっていた駅ビル店も、運営会社の理解を得て大幅な値下げに成功し、事業継続が可能になったのです。しかし、最初からスムーズに事態が運んだわけではありません。

あづま書店の再生を阻んだのは何だったのでしょうか。次号で詳しくお伝えしたいと思います。

[2010.11.18配信]

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