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事業再生の現場から

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(15)敵が味方になった理由〜書店再生2

取り次ぎのバックアップで返済条件緩和
結果的には取次からの協力も得ることができたあづま書店(仮称)ですが、そこには「駅ビルという収益店舗を手放したくない」という取次会社の思惑が見られたのは事実です。また、あづま書店の撤退後、競合取次会社と取引をしている書店が同じ場所に出店するという計画が持ち上がったことも幸いしました。それ以前は、支払い遅延が続くあづま書店に対する取次の対応は厳しく、協力を得られる状況ではなかったのです。
当初、担当コンサルタントは、優良店舗の事業を守り雇用を確保するために、新会社を設立して優良店舗の運営を移行させることもやむなしと判断しました。つまり「カーブアウト(事業の切り出し)」という手段です。この方法ならば、優良店舗を既存の負担から切り離し、健全な状態で経営できるという筋書きです。
しかし、新会社ではそれまで取引していた大手取次で口座を開設することは難しいという問題がありました。そこで、別の中堅取次に事情を話して相談したところ、協力的な姿勢を見せてくれたため、新規契約の交渉を進めていました。ところが、先述の競合店舗開店の計画が持ち上がったことで、考えを改めた従来の大手取次と取引を継続できることとなり、「取次のバックアップがあるなら」と、金融機関も返済条件の緩和に応じてくれるようになりました。

選択と集中が鍵
いくつかの幸運が重なってあづま書店の再生は軌道に乗りましたが、収益のある店舗を持っていなければ事業継続は叶わなかったかも知れません。現在でも、多くの書店は売上げの落ち込みをカバーできずに営業停止して、倒産に追い込まれています。
書店経営を取り巻く環境が激化するなかではやはり、取次や金融機関とどうやって良好な関係を保つかがポイントとなります。また、大きなキーワードは「選択と集中」です。複数の店舗展開をしている場合は、採算店舗と非採算店舗の取捨選択が求められます。一部の店舗が利益を出しているにもかかわらず、会社全体の収支を見ると、非採算店舗の赤字がそれを上回っている例は多いでしょう。設備投資の資金が経営を圧迫しているのです。
新規出店や増床のために莫大な金額がかかるにもかかわらず、店売も期待したほど伸びないまま、取次への支払いが発生してしまう。増床により既刊本のラインナップを充実させれば、すぐに実売が出ないからといって無闇に返品するわけにもいかないでしょう。再販制に守られているはずの書店業は、その制度がキャッシュフローに大きく影響しているというのが実態なのです。

キャッシュフロー経営へ
セントラル総合研究所では以前からキャッシュフローを意識した経営を呼びかけています。そもそも、キャッシュフロー経営とはなにか?こちらでご紹介しています。

[2010.12.2配信]

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