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事業再生の現場から

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(22)「リストラない職場に」ママさんパワーが復興支える

地元のためにできることは精一杯やりたい
3月11日に東日本大震災が発生したことにより、被災地にある大部分の企業が事業の中断を余儀なくされています。その状況下、避難所で炊き出しのボランティアに奔走しているのが、岩手県で昨年12月に設立したばかりの飲食サービス会社、タナセイ社(仮称)のスタッフです。
タナセイ社のある町は内陸部にあり、建物倒壊などの大きな被害からは免れました。しかし、比較的被害は少ないものの、停電と断水によって住民の生活は不便を強いられています。いつ起こるとも知れない余震を恐れ、地域の学校や公民館へ避難してきている人も多くいます。タナセイ社の代表を務める高橋とも子さん(仮名)をはじめ数名のスタッフは、家族の無事を確認した後すぐに行動を開始しました。物流が全て停止しているなか、近隣の農家から米や野菜を調達し、山水道や井戸を備えた家庭から水を分けてもらって、食料が不足していると見られる避難所へ向かったのです。
「地域の支援を受けて事業を始めたのだから、地元のためにできることは精一杯やりたい」と高橋さんは語ります。スタッフは近隣在住の40〜50代の女性10名。全員、一昨年町内で閉鎖した大手電機メーカーの工場の元従業員です。工場の閉鎖に伴い、関東など県外への配置転換か、退職かの選択を迫られ、家族を優先しました。「子どもや親の面倒を見るため、絶対に家族優先。配置転換は考えられなかった」。結局、家庭を持つ女性の大半は退職を余儀なくされたのです。その後、元同僚同士で就職活動などの情報交換を行ううちに起業という選択も浮上。自治体のビジネス講座などを活用しながら企業に向けて学び始めました。

復興後の雇用創出に意欲
自分たちで生産した農産物で弁当を製造・販売している近県の農家主婦グループの活動を視察して、高齢者が多い地域事情からニーズの高い弁当宅配のビジネスを構想。地域の産業を支えていた電機メーカーの撤退により衰退の加速が懸念されていた町では自治体主導で「元気な地域づくり」事業が進められており、町内の空き店舗の利用を募集していたことも起業を後押ししました。
元同僚のメンバー個々が出資。経費節減のため、自分たちでタイル剥がしなどに汗を流し、チラシも手作りして、昨年12月、ようやく開業に漕ぎ着けたタナセイ社。商店街の空きビルの一階を改装して、手作り弁当の販売・宅配のほか、店内に飲食スペースを設けて交流の場として開放しました。
設立当初から「リストラも定年もない職場にしたい」と力強く語っていた高橋さん。大地震から3日経過し、地元の避難所が落ち着いたのを見て、被害の大きい沿岸部への炊き出しの支度をしながらも「この地震で職場を失った人は数え切れない。提携農家を増やして、事業を拡大できたら」と、早くも復興後の雇用創出にも意欲を見せています。

[2011.3.17配信]

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