初めての方へ資金調達債務返済、債務超過不動産リースバック

TOP > メールマガジン > 事業再生の現場から > 緊急輸入決定!“バター不足”が象徴する日本経済

事業再生の現場から

メールマガジンで紹介しております「事業再生の現場から」を紹介しています。


(32)緊急輸入決定!“バター不足”が象徴する日本経済

福島県。4万トンの原乳を廃棄処分に
8月8日、農林水産省が業務用冷凍バター2000トンの緊急輸入を決定しました。東京電力福島第一原発の事故の影響により、福島県などを中心とした畜産農家ではおよそ4万トンの原乳を廃棄処分しています。また、猛暑のため、国内の減乳生産量自体が落ちているとのこと。バターの緊急輸入は平成20年以来、3年ぶりの措置となります。
3年前のバター騒動は、オイルショック時のトイレットペーパーのようにバターの「狂乱物価」が深刻化し、問題となりました。当時は、自国の食料自給率を上げる努力をせず、他国に依存したままでの過激な牛乳生産調整を行った農水省の政策ミスだという声も上がったものです。
大量の牛乳が産業廃棄物として処理されたことをきっかけに、農水省の指導で牛乳の減産が始まりました。ところが、減産で価格が安定したのも束の間、国内外の搾乳量減を受け、今度は供給が衰えたというバランスの悪さが招いた事態でした。

需給の悪循環が異常高騰に
国内で生産された牛乳はまず飲料用、次いで生クリームやヨーグルトなどに使用され、最後にバターなどの固形乳製品に回されます。生産過剰で牛乳が投棄されたとき、既にバターの在庫は極限まで積み上げられていました。品薄になるのはこの逆の順序です。需要は増え続けているのに供給は減るという悪循環が続いた結果、販売価格の異常高騰に至ったのです。
この構図は大企業と中小企業からなる日本経済を連想させます。経済成長の下では、勢力拡大する大企業の需要のもとに、余剰乳で過剰に生産されるバターのように、中小企業も供給を拡大していきます。ところが、近年の原油・原材料価格の高騰はまずそうした中小・零細企業を襲うもの。大企業は、商品や部品・原料を供給する下支えが苦しんでも、己の利益を犠牲にしてまで救おうとはなかなかいかないのが実態です。

後手の規制改革にまずは生産者保護を
近年は上場企業や中堅企業などの大型倒産も増えています。大口の取引先を失った中小・零細企業の更なる連鎖倒産に繋がることも想像に硬くはありません。
大企業が己の供給の維持だけを意識していては無駄ばかりが増え、業界全体が疲弊してしまうことでしょう。
平成20年のバター不足は、緊急輸入に加え、農水省による異例の増産要請にまで至りました。「中小企業の体質強化」を謳いながらも、問題が発覚してからの後手の規制改革や法改正は、中小企業の不安を掻き立てるばかりです。それにメディアが便乗するものですから、消費者のインフレ心理が煽られ、混乱の拡大につながります。
世界の経済状況がめまぐるしく変化しているなかで、長い間デフレが続いた日本では特に、流通と経営のバランスを保つための判断は慎重を期すべきと痛感しています。また、今回の事態は単なるバランスの問題には止まりません。需要を賄うよりも先に、一刻も早く生産者の保護に取り組んで欲しいという思いは切実です。

[2011.8.23配信]

ページトップへ