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法人格否認:要件、債権者の詐害、事例
法人格否認の法理とは、一定の要件が満たされた時、法人とその背後にあり法人を支配している者とを同一視する考え方。 昭和44年2月27日最高裁判例で法人格否認の法理が始めて適用された。
法人格否認の要件
形骸化
総会・取締役会の未開催
親子会社で相互に役員を兼任
会社業務と個人業務の混同、会社財産と個人財産の混同
濫用
競業避止義務等を負うものが実質的に義務回避をしている場合
債権者詐害を目的とした新会社を設立し、資産の大部分を移転した場合
新会社設立が不当労働行為の手段とされた場合
債権者の詐害とは
強制執行免脱、財産隠匿のための新会社の設立すること
これに対抗するには
詐害目的の会社が合名・合資・有限:会社設立取消の訴え(商141、147、有75-1)
株式会社:詐害行為取消権(民424)
営業譲渡で商号が続用の場合:債務の継承が原則(商26-1)
設立無効などは財産の取戻しには効果が薄い
⇒したがって法人格否認による解決(代表者個人などに求償すること)にも実益がある
法人格が否認されること
一時的に保形式上の法人機能が停止させられる
⇒すなわち、当該法人の背後にある支配者に支払義務が負わせられる
また、同時に両者に請求することもできる(両者は連帯債務を負う)
債権者の詐害とは
結局、形式的にも実態的にも同一と看做されるケースで法人格が否認されている
逆に言えば当社コンサルタントが話しているように、外部から見て元の法人(個人)とまったく無関係という形式(実態)を整え、設立時期が破綻なりの直前でなければ法人格否認ということにはなり難い
ただし、元の土地・建物・設備等を継続使用することを前提とすると、ロジックを慎重に組み立てる必要はある
by m.hirota 2003/07/31
(参考文献:「法人格否認の法理と実務」二宮照興ほか 新日本法規)
法人格否認のケーススタディ
A倒産後に休眠会社Yを利用して、同一の事業を継続したケース |
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<状況> XはAの債務について物上保証、連帯保証。Aが倒産したためXは代位弁済した。 一方A倒産後に休眠会社であったYの代表取締役にCが就任、A所有の建物・機械の一部、従業員の一部を引き継ぎ、営業にも一部連続性がある。 そこでXはYに求償金債権の請求をした。 <皆さんの判断> |
A経営危機下でB社と資本提携し新会社Yを設立、事業の一部を継続したケース |
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<状況> ノンバンクXはAに対し唯一の不動産(工場の土地建物)を担保に貸付をおこなった。 担保割れ、大幅な債務超過、滞納による差押えもある状態で、B社と資本提携し新会社Yを設立した。 Yの役員構成は、代表取締役:Aの監査役、取締役会長:a、 Bから専務取締役、常務取締役 YはAの工場を包括的に賃借、Aの従業員を再雇用し事業の一部を継承して営業開始。 aはAのXへの債務について連帯保証している。 <皆さんの判断> |
社内勉強会「法人格否認の法務」について
債務処理をするにあたり、「詐害行為取消」と共に留意する必要があるのが、この「法人格否認」である。
参考文献とした「法人格否認の法理と実務」(新日本法規)を題材に、
・「法人格否認」の全般的な理解
・数種のケースについて、各自の見解を出しディスカッション
・代表的なケースをまとめ、留意すべき点の再確認
をおこなった。