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TPP:貿易自由化へ事前協議本格化
日本輸出産業:関税撤廃、規制緩和のTPP推進
政府は平成23年11月9日、世界の主要国と高いレベルの経済連携を推進する「包括的経済連携に関する基本方針」を閣議決定しました。日本は、中国や米国、EU(European Union:欧州連合)など主要貿易国とのEPA(Economic Partnership Agreement:経済連携協定)やFTA(Free Trade Agreement:自由貿易協定)への取組みが遅れており、輸出産業界からは関税や輸入数両制限など撤廃、緩和される貿易自由化を訴える声が上がります。
11月13日には、米ハワイで開催されたAPEC(Asia-Pacific Economic Cooperation:アジア太平洋経済協力会議)首脳会議にて、加盟国間の関税が100%撤廃されるTPP(Trans‐Pacific Partnership:環太平洋経済連携協定)交渉参加に向け、関係国と協議に入ることを表明しました。
TPP:「人、もの、カネ」の流れを促進、関税100%撤廃
FTAは二国間・地域同士でかかる関税や企業などの規制を緩和し、物やサービスの流通を自由にする協定です。一方、EPAは人の移動や知的財産権の保護、投資など物流に加え幅広い分野で連携を強化する協定。さらにTPPは、EPA同様に幅広い連携となっていますが加盟国間で関税など例外なく撤廃を目指す協定となります。
日本の欧州向け自動車や家電輸出の打撃となっている要因に韓国の急速な輸出拡大があげられます。韓国は、平成9年のアジア通貨危機をきっかけにEUと戦力的パートナーの構築で合意。FTAに正式に署名し大胆な事業再編を果たし、欧州へ輸出を拡大させ世界に存在感を示しました。日本はTPP参加によって工業製品などの輸出拡大や、安定した資源調達による国内経済の活性化を目指します。その反面、国内の農業や食品、医療、保険などへの影響も懸念されています。
日本の貿易:FTA比率、米国・韓国の半分以下
少子高齢化で市場が縮小する日本は、アジアをはじめとする新興国など景気の牽引役と手を組み、輸出を拡大させなければなりません。FTAやEPA、TPPを締結、加盟することによって成長を国内に取り込み、産業の活性化を目指します。
日本は、高度成長期に貿易自由化の恩恵を受け輸出を拡大し企業は恩恵を受けてきました。その日本が貿易自由化に大きく遅れをとっているのが現状です。平成23年8月時点での主要貿易国のFTA比率は、米国が37.5%、韓国36.2%、EU30%に対して日本は17.6%に過ぎません。TPPに限らず、ASEAN(Association of South‐East Asian Nations:東南アジア諸国連合)+3(日中韓)や日中韓FTAなど積極的な推進も同時に目指します。
TPP加盟での経済効果:政府、10年でGDP2.7兆円
TPPへ参加した場合の経済効果を内閣府では、「2.4兆円〜3.2兆円のGDP引上げ」とする一方、経済産業省では加盟しなければ「GDP10.5兆円減少」。さらに農林水産省では「農業関連GDPが7.9兆円減少」と試算するなど混乱を招きました。政府は平成23年10月、TPP加盟への経済効果を「GDP、10年で2.7兆円」と統一見解を公表しました。
政府の資産は小さいものの規制緩和やサービスの自由化など新たなビジネスが生み出されれば数倍もの効果も予測されます。さらにTPPは、自由化交渉が行き詰まるWTO(World Trade Organization:世界貿易機関)に変わり自由貿易圏を拡大する手段ともなり得ます。TPPを巡り日本は関係国との事前協議が本格化。相手国が何を求めるか予断は許されず、必要な情報の開示も求められます。
[2012.2.14更新]