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不動産の移転にかかる税金 ---平成16年度税制改正(案)について---
平成16年度税制改正(案)について
「個人の不動産取引に係るもの」
ポイント
- 分離課税の譲渡税率の引き下げと長期譲渡所得の特別控除(100万円)の廃止
- 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除
- 土地建物の譲渡損の損益通算および繰越控除(青色)の廃止
1.分離課税の譲渡税率の引き下げと長期譲渡所得の特別控除(100万円)の廃止
― 税金の比較 ― | |
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例) Aさんは○年所有していた土地を2,000万円で売却した。 ○年前の取得費は900万円で、売却に際して仲介手数料100万円を支払っている。 |
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現行 | 長期: {(2,000万円−1,000万円)−100万円※}×26% = 234万円 |
短期: (2,000万円−1,000万円)×52% = 520万円 | |
H16改正 | 長期: (2,000万円−1,000万円)×20% = 2000万円 ・・・34万の減税 |
短期: (2,000万円−1,000万円)×39% = 390万円 ・・・130万の減税 | |
※長期の場合は譲渡収入が433万以下の場合は増税。 用語:分離課税 短期と長期 |
2.特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除
(1)買換えの場合 | |
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現行 | 住宅ローン残※を有する居住用財産を売却し、新たに取得した居住用財産に住宅ローン残を有する場合。 譲渡損失をその年、および翌年以後3年間にわたり繰越控除することができる。(青白問わず) |
H16改正 | 売却する居住用財産については、住宅ローン残の有無は問わない。 |
(2)売却の場合 | |
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現行 | 売却の場合は、損益通算のみで繰越控除はできない。青色の場合は所有が5年以下なら繰越控除できる。 |
H16改正 | 借入残高が売価を上回っている場合、その上回る金額を限度として損益通算・3年繰越控除を認める。(青白問わず)。 |
例) Bさんは7年前に購入したローンが残っている居住用財産をH16年中に譲渡した。
その後は住宅を購入せず、賃貸マンションに住む予定となっている。
なお、売却代金は1,000万円、取得費は5,000万円、仲介手数料は100万円、ローンの残債は3,000万円。
建物の償却分は600万円であり、Bさんの所得は給与(700万円)のみである。。
(税額の計算) | |
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譲渡損 | {1,000万(売却代金) − (4,400万(取得価額)注 + 100万(譲渡費用))} = △3,500万(譲渡損) 注) 5,000万 − 600万 = 4,400万 ・・・建物の償却分 |
損益通算 | 700万 − 3,500万 = △2,800万 →譲渡した年の所得 0 |
繰越控除額 | 2,800万 > (3,000万(ローン残債) − 1,000万(売却代金))=2,000万 ∴2,000万 |
(1年後)700万 − 2,000万 = △ 1,300万 → 1年後の所得 0 (2年後)700万 − 1,300万 = △ 600万 → 2年後の所得 0 (3年後)700万 − 600万 = 100万 → 3年後の所得 100万 |
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用語:分離課税 短期と長期 |
3.土地建物の譲渡損の損益通算および繰越控除(青色)の廃止
現行 | 青色申告者:不動産(居住用・別荘を除く)の譲渡損は、損益通算および繰越控除できる。 |
白色申告者:上記のうち、損益通算のみ可能。繰越控除は不可。 | |
H16改正 | 青・白共通:土地建物の譲渡損に関して、損益通算・繰越控除は認めない。ただし内部通算は可能。 |
※救済されるケース:他の不動産で売却益がある場合。
損益通算と繰越控除の仕組み
例) Cさんは、投資マンションを1部屋所有するサラリーマンである。今回この物件を売却しようと考えている。
なお、マンションはバブルのころに購入したもので、取得価額は8,000万(償却後6,000万)、売却代金は2,000万円、仲介手数料は100万円である。Cさんは所有マンションにつき青色申告の承認をうけており、給与所得は1,000万円(うち源泉所得税 150万)である。
(譲渡損の計算)2,000万−(6,000万+100万)=△4,100万
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用語:分離課税 短期と長期