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事業再生関連法規制度等について

事業再生の概要

再生手法について(再建型私的整理、清算型私的整理、再建計画)

私的整理

私的整理ガイドライン

【法的整理と私的整理】

  破産法、民事再生法、会社更生法などの法的手続きによらず、債権者と債務者の協議により倒産処理を図る手続きを私的整理という。さらにそれを下位区分すると、「私的整理ガイドラインによる私的整理」と「一般の私的整理」に分けられる。「一般の私的整理」は法廷の手続きに基づかないという意味で「任意整理」とも言われる。「一般の私的整理」には手順や基礎が定められているわけではなく、担当する弁護士により処理の仕方が変わるが、概ね、「清算型」と「再建型」の2つに分けられる。

【再建型私的整理】

  「再建型私的整理」の手順は、まず、債権者集会を開き、倒産に至った経緯を明らかにする。その集会で今後の処理を円滑に進めるために、債権者委員会・債権者委員長を選出する。その後、債権者との間で債権を照合し、弁護士、公認会計士、税理士などの専門家の協力を得て「債権計画案」を立案する。債権者全員が再建計画案に同意すれば私的整理は成立する。

【清算型私的整理】

  「清算型私的整理」の場合は、在庫品を売却し、その売掛金を回収後、一般債権者に比例弁済しさえすればよい。

【「私的整理ガイドライン」の誕生】

  1999年、経営難に陥った準大手ゼネコンを救済するために、既に公的資金(=税金)を注入されていた金融機関が不透明なやり方で巨額の債権放棄をし、世の批判を浴びた。その反省にたって2001年9月、「私的整理ガイドライン」が作られた。

  ガイドラインは、過剰な債務をある程度軽減することにより再生が可能と思われる企業を救済するために、債務者である企業と協議して金融機関が公正に金融支援を行うためのルールである。

【私的整理ガイドライン手続きの概要】

(1)再建計画立案

  債務者企業は大口債権者である金融機関に債権計画案を提出して私的整理を申請する。

(2)一時停止通知

  主要債権者は債権計画案を吟味し、実行可能かどうか判断した後、他の対象債権者の同意が得られると見込んだ場合、対象債権者全員に「一時停止通知」を発すると同時に第1回債権者会議の招集通知も発する。

  「一時停止通知」が発せられると、対象債権者は債務者に対して、個別に弁済を請求できなくなるうえに、担保権を実行することもできなくなる。ただし、金融機関以外の通常の債権者である取引先に対する支払いは停止されない。

(3)債権者会議と専門家アドバイザー

  一時停止通知後2週間以内に第1回債権者会議が開催される。そこで、一時停止の延長を対象債権者全員が同意した場合、さらに3ヶ月以内での一時停止期間が定められる。その間に、対象債権者は債権計画案で示された債権放棄、期限の猶予、金利の減免に応じるかどうかを検討する。

  この間に債権計画案の経済合理性や実行可能性などを調査し報告するために、弁護士や公認会計士などの専門家アドバイザーが選任される。専門家アドバイザーは約1ヶ月かけて調査をし、対象債権者全員に調査報告書を配布する。

(4)有権者の同意

  第2回債権者会議で、対象債権者全員が債権計画案に同意した場合、その会議から約1週間後の同意書提出期限日に同意書が集まれば、私的整理が成立する。

【再建計画の内容】

  債務者企業が私的整理ガイドラインを使って再建を図る場合、その企業に事業価値があり営業利益が出ている事業部門があることが必須である。つまり、債権者が支援すれば再建の可能性のある企業でなければならない。

  事業計画案の内容として、原則となるものは以下の5点である。
@私的整理成立後の次の会計年度を含む3会計年度以内に、実質債務超過を解消して黒字化すること
A支配株主の株主権を消滅させ、減増資などにより既存株式を希薄化すること
B経営者は退任すること
C債権者の負担割合は衡平(実質的平等)を重んじること
D法的手続きによる事業整理よりも負担が少なく回収が確実であるなどの有権者にとって利益があること

【私的整理ガイドラインの課題】

  私的整理ガイドラインによる私的整理は、金融機関に対する債務が免除されるだけで、一般の商取引債権者影響は影響を受けないため、民事再生法や会社更生法と比べて、事業価値の毀損は少なくて済む。しかし、あくまでも紳士協定に過ぎないので強制的な拘束力はない。そのため、大多数の債権者が同意したにもかかわらず、一部の少数の債権者が反対したために法的整理に移行せざるを得ない場合がある。そのときは私的整理のために進めてきた手続きが全て無駄になり、最初からやり直すことになる。

【参考文献】

事業再生 会社が破たんする前に 高木新二郎弁護士 岩波書店
私的整理ガイドラインの実務 田中 亀雄他編 金融財政事情研究会
財産評定等ガイドラインとQ&A・事例分析 日本公認会計士協会編 商事法務

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