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事業再生関連法規制度等について

社内勉強会

TPPで日本の農漁業が変わる第6次産業

消費者メリット、さらに安くなる農産物・水産品

内閣府や経済産業省などはTPP(Trans-Pacific Partnership:環太平洋戦略的経済連携協定)参加は自由貿易、無関税と輸出産業にとって、大きなメリットをもたらせることになります。自動車や電機産業はなど輸出業にとっては関税がなくなり、アジア新興国に続々と世界のシェアを奪われていた市場を取り戻すチャンスでしょう。
一方で農林水産省が問題視しているように日本の農漁業に危機が迫られています。ただでさえスーパーでは中国産の野菜や米国のオレンジ、オーストラリアの牛肉など国産品よりも安く販売されていますが、さらに関税がなくなればより価格の安く農産物が海外から輸入されるのです。日本の農業就業者としては窮地に追い込まれるのは目に見えています。

農業就業者5年で2割減少、新しい農漁業へ

第6次産業平成22年9月7日、農林水産省が発表した「2010年世界農林業センサス結果の概要(暫定値)」によると、農業就業人口は260万人で、平成17年に比べ75万人と22.4%減少しました。農業就業人口の平均年齢は2.6歳上昇、65.8歳とさらに高齢になりました。若者の疎開で農家を離れ、跡継ぎもなく農業の継続は深刻な問題を抱えています。
TPP参加が決まればさらなる日本農業の縮小は予測がつくところです。海外から関税のかからない農産物が輸入され、価格面でまったく勝負にならず衰退の道をすすむのでしょう。その対応から政府では、農家への個別所得保証や輸出産業化を推進して保護する動きがありますが、日本の農産物の需要のある市場への推進として、近年増加傾向にある「第6次産業」という生き残りの道が話題になっています。

第6次産業と第1.5次産業の違い

第6次産業第6次産業とは農林漁業など第1次産業を、加工など第2次産業や、小売など第3次産業と融合させるもので、生産した農産物や採れた魚を用途に合わせ切ったり、刻んだりして、袋や箱に詰め、消費者やスーパー、飲食店へ販売する産業です。生産物に付加価値をつけた第1.5次産業と類似していますが加工、流通を複合化させた第6次産業とは異なるものです。
農業を見るとすでにいくつかの農家が集まった農業経営体が農業生産関連事業を行いその経営体の数は年々増加しており、いづれは農業株式会社化も考えられると思われます。経営体農産物の出荷先をみても、農協や卸売市場への出荷が減少し、ネット販売など手軽に出来るようになり直接消費者へ販売することが増加しています。マーケティングをしっかり行いニーズに合った商品であれば消費者は購入するのです。

具体的な第6次産業の例を見てみましょう

●タレント田中義剛さんの北海道の花畑牧場「生キャラメル」の例 酪農業は一般に生産者→農協など→加工会社→販売店という流通で消費者に商品がいきわたりますが花畑牧場の場合、生産者・加工・商品化→物産店・ネット通販・TVショッピングと直接消費者へも届けるようにし、平成19年以来、ニセモノが氾濫するくらいに大ヒットしています。
●京都・農業生産法人の「九条ねぎ」の例
農協に卸すだけのねぎを細かく刻み,袋詰め、ラーメン店など飲食店に直接販売。ねぎだけで平成21年売上2億7,000万円で今後スーパーへも拡販、納入予定。
●滋賀・甲賀市、農業法人の「甲賀もち」の例
複数の農家が集まりもち米を草もちや米粉のめん、正月用の餅などを作って直売施設で販売。もち米をそのまま売る場合の2倍以上だといいます。
●大阪・枚方市の農家レストランの例
農家レストランの先駆けである農園。約5ヘクタールの敷地に従業員ら約50人が働き、敷地で生産された作物を使い料理を提供。農家だったら50人も雇用できなかったといいます。

農業株式会社化で新たな企業、雇用拡大

第6次産業TPP加盟国参加がきまれば急激に生産量を減少せざるを得ない農漁業において、今後の地域経済の発展、活性化を図るために第6次産業は重要な産業になることは間違いありません。
リーマンショックを引きづり企業は雇用を手控え、失業率は5.0%。平成22年の大卒の就職率は極めて悪い状況で、文部科学省の「学校基本調査」によれば就職率は60.8%%で約8万7,000人が就職も進学もしていない状況です。
第6次産業が株式会社として農産物に付加価値をつけ、起業のきっかけとなって新ジャスダックに上場するようになれば産業として成立し、新たな雇用を生み出し新しい日本の発展に貢献することが期待されます。

中小企業庁:「全国転業チャレンジキャラバン」実施/平成22年11月より

中小企業庁は平成22年11月から転業を希望する中小企業経営者を対象に無料相談会「全国転業チャレンジキャラバン」を始めました。国内市場の拡大が望めず、さらに海外展開が困難な国内型産業への転業支援を本格化させる考えです。

国土交通省:建設業向け転業支援拠点設置/平成23年度より

国土交通省では、公共事業削減で経営が厳しい中小建設業の住宅リフォームや農林業への転業を支援する拠点を平成23年度に全国で整備する方針を決めています。

第6次産業の可能性

第6次産業という新しい産業に政府は期待を持ち、今後も優遇措置や特別融資、助成金など転業支援策も出る可能性があります。農業・漁業従事者はもとより、流通、小売、食品加工など関連産業のほか、建設、土木、不動産業、量販店など異業種の転業も見込めます。また個人では定年退職者や自営業を廃業した方、団塊の世代などなど可能性があります。転業に挑戦し生き残りをかけることも考えなければならない時代です。

▼関連記事:ブログ・時事ウォッチ農水省「第6次産業化」強化に1,000億円ファンド創設:TPP参加でアジアの活力取込み国内成長を実現[2011.9.10配信]
▼関連記事:ブログ・時事ウォッチ新成長戦略、FTA推進:自由貿易化へ農業変革!法人規模拡大し事業集約化[2011.8.6配信]
▼関連記事:ブログ・時事ウォッチ農水省、6次産業化法:農業生産から輸出まで事業化へ/金融支援・海外販路支援[2011.3.4配信]

[2010.11.6更新]

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