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再生事例

都内酒屋業Y商店

*社名、名前、場所は仮称です。

都内酒屋業Y商店

自己破産、競売か
  商業地区で酒屋業を営む吉沢商店(仮称)の店主吉沢(仮名)さん。地主だったこともあり、バブル期に金融機関の勧めで1階に店舗、2階から7階が賃貸マンション、そして最上階に自宅という自社ビルを建てました。
 ところがバブルが弾け、家賃収入が低下し、家業も不況で収入が大幅に減。頼りにしていた自慢の息子も会社からリストラを宣告されて失業状態になりました。
 ついに金融機関への返済が滞って「このままでは自己破産、自社ビルは競売か」という状態に陥ったのです。この状況から自社ビルを守り、事業を復活させることが出来るのか。「実質的に」必要な不動産を守り、事業を維持するスキームです。

新会社で自宅兼店舗兼テナントビルを確保
  吉沢さんは家族会議を開いて、妻や息子にたいして「絶対になんとかなる。頑張るから俺を信じてついてきてくれ」と宣言しました。主の宣言はとても大切なことです。家族が一枚岩になれれば、債務の問題は怖くはありません。まず、債務超過の自社ビルを一旦「売る」ことを家族に話します。ビルを任意売却して全体の債務を減らすのです。
 ここで店主吉沢さんには秘策がありました。自社ビルをただ単に手放してしまったら、そこに住んでいる家族は路頭に迷ってしまいます。吉沢さんは、この窮地を脱出する、いろいろな実例を調べました。
 その結果、表向きは第三者、実は協力的第三者に自社ビルを買い取ってもらって、そのまま使わせてもらうリースバック方式が存在することを知っていたのです。
 新会社(協力的第三者)に自社ビルを買ってもらって、吉沢さん一家は賃借人としてそのまま使って自宅にも住み続けるのです。こうすれば、普段の生活も商店の営業も外見からは何の変化もなく過ごすことができます。
 ただ、吉沢さんが心配していたのは、この秘策を完成させるためには主に3つ、条件があることです。@新会社の代表を引き受けてくれ、なおかつ信用力のある第三者がいるか。Aその人は買い取り資金の調達ができるか。B建物に瑕疵がなくローンや融資条件を満たしているか。
 幸いこの3つの条件が揃い、リースバック方式がなんとか使えることになって、家族、特に息子さんもほっと一安心。「おやじ、これで安心して仕事探しが出来るよ」と元気を取り戻したのです。

二次破綻の危険性も
 このリースバック方式には、もう一つ重要なポイントがあります。不動産に固執するあまり、判断を誤れば後で更に悲惨な状況になる恐ろしい「二次破綻」を招くかもしれないのです。
 吉沢さんは、まず本業の「事業収入」から新会社に会社と自宅の家賃を払うことが滞りなく出来るのか?協力的第三者である新会社は、予測される「将来のテナント収入」で、購入資金の返済が可能なのか?を冷静に、かつ堅めに計算して判断をしたのです。

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新会社設立、事業譲渡で苦境を乗り切れ
  事業を守るためには、まず「その事業は守るべきものかどうか」を厳密に調べなければなりません。採算があわない事業まで守ってしまったら、「二次破綻」を招きます。この場所で酒屋業の将来性はあるのか、後継者はいるのか、何よりも、吉沢商店の債務がないとの仮定で、キャッシュフローは廻るのか、など財務内容のデューデリジェンス(精査)が必要です。
 この時のポイントは「債権者はバランスシートから財務状況をみますが、現実的にはキャッシュフロー表からチェックする」ことです。いくらバランスシートに「資産」があっても、それは簿価であり実勢価格とは大きく乖離しているケースがあります。何より毎日の運転資金が廻らなかったら、事業再生以前に資金繰りで頓挫してしまいます。

都内酒屋業Y商店

 吉沢商店の場合、精査して出てきた答えは“イエス”。酒屋業は債務さえなくなれば経営を維持することが可能であることがわかりました。そのことを知った若い息子さんが突然宣言しました。「オヤジ、俺が酒屋を継ぐよ。いや、やらせてください!」これで事業承継にも問題がなくなりました。
 若い息子さんは新会社をつくり、一部の収益事業部門だけ新会社に移して苦境を乗り切ることにしました。新会社の社長にはひとまず信頼できる番頭さんを置きます。若い息子さんは役員として新会社に入り、これから経営を勉強することになります。
 さらに、吉沢さんは外部の相談者として新会社と別な契約をするのです。吉沢さんが役員として新会社に入ってしまうと、旧会社の債権者から「新会社も旧会社と一体だ」と誤解されてしまうからです。
 こうして、旧会社よりもさらに磐石な経営陣が出来上がりました。
 この布陣で二期(最低一年半)黒字で乗り切れれば新会社は金融機関から新たな借り入れも起こせる可能性があります。旧会社は利益が出しづらいし、吉沢さんにしても、自宅は手放し経営からも身を引いていますから、収入はそれほどありません。
 金融機関は吉沢さんから取り立てができないとわかると、吉沢さんと旧会社に貸し付けた残債をサービサーに売却して、償却することにしたようです。


サービサー※交渉
  自宅を協力的第三者に売却した吉沢さん。実勢価格は大幅に下がっていますから、売却後もローンの残債があります。これを金融機関に握られたままでは、本当の意味での再生とはいえません。
 ところが吉沢さんは、新会社の契約社員となり、以前ほどの収入はなくなりました。また旧会社も優良部門を新会社に事業譲渡しましたから、ほとんど収入はありません。
 つまり吉沢さんは、個人としても吉沢商店の経営者としても、残債を「返さない」のではなくて「返せない」状態です。これを金融機関にしっかりとアピールすることが大切です。
 金融庁の指導により、金融機関は回収の見込みのない債権を長期間保持できなくなりました。そこで金融機関は、吉沢さんの債権をサービサーに譲渡せざるを得ません。サービサーとは債権回収会社のこと。吉沢さんは、ここでこの債権についてサービサーとの交渉となります。
 普通、担保がなく回収見込みの立たない債権(ポンカス債権)は、簿価の数%で償却されます。つまり吉沢さんは、その額に+数%を支払うことで債権を買い取ることができるかもしれません。  サービサーは、不良債権の処理に困った金融機関を救うためにできた法律ですが、うまく使えば、債務者の救済にも繋がります。数億円もあった自社ビルの債務が、サービサー交渉時にはその数%になっているのですから、吉沢さんにとっても朗報だったのです。

再生事例


※サービサー:債権回収の専門業者。金融機関の債権を時価で買い取り、債務者から回収します。平成11年2月の「債権管理回収業に関する特別措置法(通称:サービサー法)」 の施行により、民間債権回収会社の設立が可能となりました。

5年後に自社ビルを購入
  こうやって新会社で事業を継続した結果、吉沢さんと息子さんのもとには自宅兼店舗兼テナントビルの購入資金と信用が蓄積されます。実は吉沢さんは、賃借人となった後も賃貸マンションの「管理人」として働いて細々とした収入を得ていたのです。
 事業は新会社で継続し管理人としての副収入も得る。そして近い将来、息子さんは新会社の経営者になれる。つまりこの方法は事業承継でもありました。
 新会社は5年後には自社ビルを購入し、吉沢さんは見事に復活を遂げました。

 如何ですか。どんな苦境でも、やる気とやり方で必ず「再生」の道は開けるのです。

[2010.7.12更新]

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